TOMONOURA de ART 鞆の浦でアート散策

鞆の浦でアート散策

TOMONOURA de ART が開催されている鞆の浦を訪ねた(2023年9月24日〜10月15日)。今回で11回目を数えるアート展。主に広島県出身の画家や工芸家による作品を、鞆の浦の歴史的建造物が残る町並みに点在させている。アート鑑賞を楽しみながら、作品がまちをそぞろ歩く契機となり、細い路地や建築と風景を味わう楽しみを誘う。これまで何度か訪れたまちではあるが、古い町家を新しくリノベーションした「鞆てらす」ができていたり、定評のある宿NIPPONIA ができていたり、新しいカフェやレストランがオープンしていて活性化している動きを感じた。はじめて太田家住宅にも入った。作品が展示されているため入館料を払い歴史ある建造物を拝見したが、新鮮な体験ができた。鞆の浦のシンボル常夜燈のすぐ脇のカフェでは、散策の合間の休憩をとる観光客のなごやかな姿があった。

鞆の浦の風景

太田家住宅の主屋・酒蔵でのアート鑑賞

太田家住宅は江戸時代から薬草酒である「保命酒」を醸造販売し、鞆の浦の特産品として全国にも知られていたという。その主屋、酒蔵など9棟が見事に保存されている建造物群は国の重要文化財にも指定されている。江戸末期には尊皇攘夷の旗頭三条実美卿ら7人の公家が滞在したり、思想家の頼山陽など名士、文士も逗留した歴史を感じられる重厚な住宅である。多数の作家作品が展示されており見応えがあった。なかでもランズエンド・花の茶室と名付けられた9名の作家が手がけた茶室空間には強い印象を受けた。

ランズエンド・花の茶室

新鮮な感覚のアート作品

太田家住宅 新蔵には右下誠氏の作品が入っていた。大きくあいた口の中央にHITと書かれた文字。願いを書いた紙を丸めてHITめがけて投げる。HITに当たると願いが叶う!?鑑賞者も参加できる楽しい仕掛けだ。並びの江戸期の建物である保命酒屋の2階には、小林泰子氏の作品「静かな時間」が展示されていた。急勾配の階段を上がった2階の窓辺の陽光が優しく満ちた部屋。時がとまったような部屋に、彩りが美しい糸が巻かれた葉が舞う詩的な作品。4畳半ほどの広さの部屋はしんとしていて、外の喧騒からも切り離されている。静かな情景のたまりの中にいるようだった。

右下誠氏の作品

 

 

小林泰子氏の作品「静かな時間」一部

 

猫のいるまち

鞆の浦を歩くと猫に突然出会う。町中の駐車場でおじさん座り(後脚2本を前に突き出して腹を出して座る)をしている茶トラ猫くんもいて、微笑ましい姿に思わず笑ってしまった。白黒の猫くんとは明圓寺から出ると目が合った。じっとこちらを冷静に見つめるとてもクールな猫である。圓福寺に上がる石段でもキジ猫と出会った。この猫は人懐こい猫で、私たちの後を追いかけてきた。

白黒猫との遭遇

 

常夜燈近くのカフェも魅力

鞆の浦のシンボル常夜燈の脇にはカフェが並んでいる。ドリンクやスイーツを購入できるが、散策の疲れを癒すのに絶好のスポットである。港の景色も素晴らしい。私たちはレモネードをいただいた。TOMONOURA de ARTは10月15日まで開催。アートを巡る町並散策は、古くて新しい刺激と疲れをほぐすリラックス効果を与えてくれた。またこの町を訪れたいと思う。

常夜燈脇のカフェとおいしそうなスイーツ

レモネード